市立博物館の星より/本田憲嵩
 
今日の残り時間を いや
これからの日々を
一体どうやり過ごせばいいのか
博物館の展望室の幅広い窓から
霧に包まれた青い湖をみる
博物館って言ったって
それほど大きい訳じゃないから
あの切り取られた谷地坊主のガラス張りのサンプルを見て
そういえば子供の時分
高山でその坊主頭を踏み超えて
沼をわたり
カエルと
ヤツメウナギを探した
という
懐かしい記憶がよみがえった程度だ
展望室から見える湖のほとりに
水鳥が二、三羽いたって
あれが先ほど見た
青サギなのか
と 好奇心の剣先を鋭くさせてみたとて
それもすぐに膿んでくる
そういえば
青サギも青サギの卵も今日の霧の湖みたく
矢鱈とうすら青かったのが印象に残る
長年ホルマリン漬けにされて
(そのせいなのかどうかは定かではないが)
ふやけきったミズダコもどこかうすら青かった
オホーツク時代に作られた装飾品である
三日月型の勾玉も――


湖のわきの道を
ジョギングする男もまたブルーである


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