八重桜/リリー
春 おそく
雲低い空の下
裾のほつれをまといつけておいた
小花柄のフレアースカートはいて街へ出る
図書館の帰り、線路わきの公園で
ひとり眺めみる
八重桜
ぼったりと うつむいている薄紅は
スカートの揺れにも身を震わせる
一房が際限もなくひらかれて
まるで永遠に拡がり続けようとでもいうように
いかにも淡く
あてどない女の午後の長い時を
慰めるのか 嘲笑するのか
きりもなく身をふるわせて
何かに倦み果てたのか
重そうに
薄紅は 無言のまま
散りもせず
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