それだけが/ホロウ・シカエルボク
羽虫が渦を巻く
屋根裏の寝床で産まれた
産声はか細く
皆がこの子は駄目だと思った
けれど乗り越えた
四つになるまでは
臥せってばかりだったけど
学校には馴染めなかった
教師とも
級友とも合わず
そのわけもわからぬまま
一人で居られる場所を探した
使われていない教室とか
閉鎖された屋上へ上がる階段の踊り場とか
学校に足を踏み入れると
そこから一日動かないことだってあった
ある日、彫刻刀で
校庭で見つけた鼠の死骸を
丁寧に解体した
皮膚を、筋肉を切り裂く感触に
不思議なほど昂ぶりを感じた
でもそれだけだった
何度も許されることではないとわかってい
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