幣舞の星より/本田憲嵩
燃えている、燃えている、それはいつだったか、砂利道。石炭を運搬する線路のレールで擦りむいた、街街からころげ落ち、ひとり おいてけぼりにされた。それはみなに追いつこうと自転車を必死に漕いでいた、市(まち)の膝小僧でした。その大きな傷口からは空へと熱く燃えでる、世界でも有数の赤い太陽。夕刻を告げるモノラルのスピーカーからながれでる、音の割れたポールモーリア。その懐かしいフレーズ。みずいろの恋も、みずいろの海も、まるで最後の終末の炎に染まったかのように、燃えている、燃えている、
――幣舞の橋からその炎を持ち帰ろうとする人たち。
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