定刻/ゼッケン
 
外国人が多く出入りする地下鉄烏丸御池近くのビジネスホテルの一室で浴槽に湯を張る
浴槽の縁近くにある排水溝に湯が流れ込み始め、
おれは縁を越えて浴室の床に湯があふれないように慎重に身を沈めていく
つま先から肩、首からあごを越えてもっと、水面の下に沈めていく
丸めた背中が浴槽の底につきそうになるが、頭の先まで潜ると全身が
浮き上がる、明るい水底で暖かな浮力に身体が開かれてゆく、すぐに
つま先で鎖を絡め、栓を抜く。水面が下がるとそのぶん、浮力が減る
重さが戻ってくる感覚がおれは好きだ

おれがクルマを回すとプレゼンを終えた彼が後部座席に乗り込んできた
フランシスコは言った「脳をプラス
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