小さな女/リリー
 

 季節風が未練がましく吹きつのり
 北野天満宮の梅苑に白梅が咲き始めた
 春が来るのか

 昨日よりは
 今日よりは
 明日よりは
 理想の 胸に馳せめぐり浄らかな人生を
 描いていた小さな女は
 伸びよう
 ひろがろう
 深まろう
 思い続け 疲れてやがては
 伸びようが 縮まろうが
 わたし一人

 太陽はすでに落ちてしまったのに
 夜が 来ることをためらっていて
 今、昼でも夕方でも夜でもない
 私一人 快く

 同僚とちょいと足を伸ばしてくぐった
 先斗町の路地の暖簾
 酒房の灯りに
 看板料理の土手煮つっつきながら
 飲む酒よ
 唯、満足している華の金曜日

 青ざめて乾いた風の中にむせぶ
 ふゆの 終わりが告げられるとき


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