読むことのスリル──ひだかたけし小論(8)/朧月夜
 
出版したら? とわたしは思うのです。そこから真の批評が始まると。──批評とは、過去への追想であり、作品の再構成でもあります。ここまでの論術はいわば序文のようなものであるのですが、ここから始める本論は短いものに留めておきましょう。それは、読者がひだかたけし氏の詩を味わう楽しみを損ねないためです。
 まずは、2019年10月に書かれた「只ぼうと(改訂)」(*2)という詩から引用しましょう。
 
  木立の緑が揺れている
  私は冷たい虚を飼って
  鉛の監獄から眺めている
  気だるく憂鬱な昼下がり
  空は一面の灰色模様、
  風はもう絶えず吹き
  荒れ果てた街並みが
  ぱた
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