四月になると/田中宏輔
 

順番がきて
名前を呼ばれて立ちあがったけれど
なんて言えばいいのか、なにを言えばいいのか
わからなくって、ぼくはだまったまま
(だまったまま)うつむいて立っていた。

しばらくすると
後ろから突っつかれた。
突っつかれたぼくの身体は傾いて
一瞬、倒れそうになったのだけれど
身体を石のように硬くして(かた、くして)
傾き(かたむき)ながらも立っていた。

(教室の隅にある清掃用具入れの
  ロッカー、そのなかのホーキも傾いているよ。)

先生が、すわりなさいとおっしゃった。

後ろの席の子が立ちあがった。

ぼくは机のなかに手
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