地図と蓄音機/ただのみきや
 
コンパスは串刺しの太陽を食らう
インクの肢体その所作に風で眼を濯ぎながら
めくれる笑顔の残像が染みになる鈴を吐き戻す娘の青い蝸牛菅で
処方されなかった秘密は気刻みに棘を起てる時計
流れに垂直の火柱が帆船みたいに両手を広げて歪な影を牽引し
灰壺の灰に横たわる小指が息絶えるのを見守っていた

トカゲは影を衣にして光を飾りにする
足裏でまさぐっている遺骨の中できみはたくさんの花をつけるだろう
青空には過去も未来もなく眼差しを溺れさせる無関心だけがあった
だが「永遠」と記された飛行船は近づいては遠ざかるベビーメリー
決して学習することのないわたしは溶けた鏡 日照りの逃げ水
熾火が灰
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