花便り/ベンジャミン
{引用=桜の頃を過ぎて
ふとした淋しさがこみあげてくる
そんな五月の夕べ
ずいぶんと久しい人へ
したためた手紙を読み返している
前略
いかがお過ごしでしょうか
花見の頃にはお互いどうしているだろうかと
お話したのが最後だったように思います
まだ寒い冬の盛りの中
鍋を囲んで見えない先のことを
長々と語りあいましたね
すっかり痩せてしまった私のことを
ずいぶんと気遣ってくださいましたが
あれからまた月日は流れて
いつの間にか桜も散ってしまい
庭にはつつじの匂いが漂っております
確か次に会う約束もしないまま
あなたがどうか元気に
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