二十六才の頃/板谷みきょう
 

「彼女が言うには
『車椅子から落ちたら、
突然男が襲ってきて
乱暴しようとした。』だって。

イタヤが黙ったままで
抱えようとするからだよ。

まず『大丈夫ですか。』で
『お手伝いしますか。』だよ。」

それでボクは彼女に
抱きついたのでは無く
車椅子に乗せようと
抱えたことを伝えて
謝った

帰り道
バンドメンバーから

「自分の荷物だけじゃなく
大事なギターまで投げ捨てて
脱兎の如く駆け寄る様は
笑えたよ。」

随分と長い間、冷やかされた
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