就眠儀式/佐々宝砂
 
目を閉じて。
両腕を伸ばして。
手が重くなる。
足が重くなる。

閉ざしたまなうらに、
アール・デコ調の紋様。
手が動かなくなる。
足が動かなくなる。

さあ、おいで、夢魔よ、
私のすべてをあげよう。
私は怖れたりしない。

金縛りの快楽のなか、
伸びてゆく私の触手が、
夢魔のつめたい肌にふれる。



未完詩集「百鬼詩集拾遺」または「続百鬼詩集」の「夢魔」より

戻る   Point(1)