切り花/リリー
冷たすぎない 水の入った硝子の花びん
丸くしぼんで頭を垂れた
二本のガーベラが生けられる
それは夏の日、
駐輪場の傍道に
ビニール包装されたまま
三百円の値札を付けた 落とし物だった
萎びた茎にまだ
みずを 吸い上げる力が残っていて
ゆっくり頭を持ちあげてくる
艶を奪われた自分の色など 分からず
もう一本は 花びらを開くこと
出来なくなってしまっていて
ひたすらに今枯れつつも枯れ切るまでを
咲き続け
咲きつづける
すがた断つことに
生命がきりりと鳴って虚空へむかって飛び去るのだろう
戻る 編 削 Point(7)