地域猫/リリー
 
 表札が「木戸」とある
 ここで きみはご飯をもらっていて
 今日も玄関先で眠っている

 この間は玄関ドアの傍に並んだ鉢植えに身を寄せて
 うずくまり日なたぼっこ
 きみの瞳が小路へ向いてるときも
 あるよね

 「やあ、三毛ちゃん。」
 膝をついて かざす右手に
 きみは短く鳴いて小さな頭を掌へ寄せてくる
 そんな仕草の可愛らしい
 僕の脚に痩せっぽちな からだをスリスリさせて
 かまって欲しいときもあるみたい

 きみの白く濁った瞳は目ヤニのついた青緑色
 喉にグルグル 何かの引っかかる様な
 かすれる声
 病気なのかな?

 今日は玄関スペースに停められている単車の
 バイクカバーの上で丸まって
 よく眠っている

 声かけずに行こう

 小路の並木は三分咲き
 きみと何度目かの春だよね
 いつまで迎えられるかな


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