バンドマン帰らず/ただのみきや
 
鱗がすべて剥がれると
女はかたちを失くして空になった
砕けた酒瓶のモザイク
背徳のステンドグラス
これら切り傷はすべて風景によるものだ

昼の弁当を持たない子供は母の靴紐で綾取りをした
奇跡はがらんどう
がんじがらめの宇宙船
綾取る橋で首を吊ることばを話すくらいなら
巨大な聖書が北から倒れて来る前に

開かない瓶の蓋
ガラス越しに揺らめいている愛は琉金のように
歎願する 妖艶に
すべて答は透明のまま常にそこに在る
瓶の中身が陰部にすり替わる

バケツで雑巾を搾る腰の曲がりから
流れ落ちる滝のニヤニヤした顔
名無しの音は花につまずく可憐さ
姿なき記号のメリー
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