TUMBLING DICE。/田中宏輔
 
ら●でも●首を吊られて●ぶらぶらする恋人同士っていうのもいいな●会話のなかで●ぜんぜん関係もないのに●むかし見た映画のワン・シーンや音楽が思い出されることがある●いや●違うな●ぼくが思い出したというより●それらが●ぼくのことを思い出したんだ●賀茂川●高野川●鴨川の●別々の河川敷に同時に立っているぼく●年齢の異なる複数のぼく●川面に川原の景色が映っているというのは●きみの姿がぼくの瞳に映っているとき●ぼくがきみの姿を見つめているのと同様に●川も川のそばの景色や空を見つめているのだ●雨の日には●軒先のくぼみに溜まった汚れた水が見つめているのだ●雨の日の軒下にぶら下がった電灯の光を●汚れた水が見上げてい
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