土と銀/ただのみきや
凪いでいた
こころは
畑の隅に捨てられた乾いた豆の鞘のよう
燃やされることもなく
冷気の中で目を覚ます
落日よ
遠く烏たちを巻き込む業火の蕾
咲きもせず散りもせず
ふくれあがる
誰の夜か
鏡に飢え
水を踏みひた走り
吸気へと変わり立ち枯れた
あの声は
誰の荒野か
地の陰部があらわになった
瀝青の河を釣り針のように
つながりを失くした疑問符が流れてゆく
生えてくる小さな人形の手が
脳の皮質をかきむしる
見上げることで流れ込む
瞳のアリジゴク
世界は感覚に閉じ込められ
目隠しに溺れながら記号に縋りつく
肉体から乖離した傷口が捨て
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