春の訪れ/なつき
肌と肌
擦れ合い
デコルテに
爪痕を残す
なんてことのない
ここは魂の坩堝
外は風が冷たい
冬の終わりに
また交われた歓び、哀しみ
背中にまとわりつく
不快な重み
正体は知らない
たぶん、期待ってやつらしい
無碍にもできない
それは知っている
何もなくなってからが
本当の勝負
それくらいに思っている
独りぼっちの逃避行を続けて
君に出逢った
感情が溢れて
ひとしずくの涙
鼻の頭を濡らす
君は笑った
瞬間、それまでの苦悩がすべて
ガラガラと音を立てて崩れた
何度でもやり直せる
そう信じて
空っぽの心を
記憶の欠片で
埋め尽くしたい
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