どこまでも昇る水/木立 悟
影の尾が地に触れ
うたっている
忘れかけていた蒼が
目を馳せる
特別に
彩られているはずだった
その衣は
どの空を刻んでいるのか
手のひらは白く
ひとつつぶやき
鴉が数羽
空の水を視る
夜 光の槍が降り
ひとりの家を囲み
朝 何かが失くなったことに
誰も 誰も気付くことはない
瞳はまだ 遠く置かれる
赤い傘が降り
燃え上がり 燃え上がり
雪は融け 低い低い音になる
午後の流れが
すぐ終わる青空を運び来る
月は坂の途中
じりじりと歩む
願うな 願うな
言葉にしていいのは願い以外
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