おそらく業務用として卸されるホテルのシャンプー/万願寺
 
小学校のプール(ぶ厚いこけ緑の濡れたものがびっしりと)
大学一年の時の合宿(飛鳥のとぼけた顔)
中学校の理科の時間(ふくらんだ新芽がひらいて気持ち悪いくらい匂い立つ)
わたしたちって今までのことしか書けない、知っていることしか知らない、今より後のことを書けない
大浴場のシャンプーってすこしく海藻のようだ(海に潜ったこともないけど)
それで今までを飛び石のようにつたっていくわたしの頭、記憶の舟
父親をヘイトタンクにしている、実際には母親に当たる
三十五才の子ども、悲しい
それだけでないと思いたい、それだけではない、でも
疲れてへばってはいつくばって
しまうといつもそうなる、すべて
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