ある幻影/リリー
カップ麺に熱湯注いで待つあなたの
お耳を拝借できますのなら
こそっと お話してみたい
京都駅から地下鉄に乗り四条駅で降りて
阪急電車に乗り換えます
地下鉄の改札を出た駅構内に
小さな花屋があるのです
色とりどりの花が所狭しと飾られて
通行人の目を引きます
ところがある日の夕刻でした
花屋の前に女が立ち止まっていた
何の花を見ているのか
小さな花屋はどうして
その時 真っ赤な花ばかり揃えていた
女は瞳をスウー∽∽ とかげらせると
花屋の前から立ち去った
あの人の立っていた跡から
霧のようなものが湧き上がっていた
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