モノローグ/リリー
 
 花を生けずに
 花瓶に水をはる

 絵を入れずに
 額ぶちを吊る

 そうして

 北向きの六畳間の窓を開け
 風だけを 入れる

 雪光る 比良の山稜と
 湖の流波に
 たゆたう渡り鳥の群れ
 潜ったり
 水面を羽ばたいて駆けてみたりする
 彼らのすがたは
 小さく見えて

 窓辺に立つ女は
 胸の奥ふかくまで吸い込んだ朝の空気を
 まるで
 糸を出す蜘蛛のように吐き切るのだった

 

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