旅するエコー/ただのみきや
 

過去の水脈の帰らぬ夢だけに波紋を呼び起こす
そして冬枯れの赤い木の実
まだ生の名残りを帯びた死
死を産み落としたばかりの生の搾りかすを
視界の端の暗い灯とし
忘却に包まれた価値ある何かのように
細めた目でいつまでもしゃぶっている


矛先を外へと向けよ
裂果せよ
自らの息みとうめきにより
他者の濡れた光のくすぐりや
ささやく小さな風たちの無暗な接吻によらず
裂果せよ
おのが虚空を炸裂させろ
めぐる響きの円環しきれない
半身の抱擁と半身の相殺
狂おしいもがきとゆらぎの中で


いわれを失くした記号の砂漠
青白い鬼火



                       (2023年1月28日)









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