旅するエコー/ただのみきや
足跡は花のように孤独へ縫いつけられている
儀式めいた言葉の所作に尻を乗せたまま
視界を蝕まれてゆく
こころの満ち欠けに
意味をあてがうこともなく
残像は凍りつき
自らの裂け目で溺れながら白く劣化する
ひとつの冬から羽化した女が熱量を隠したまま
死者の体温を慮っているその唇の傾斜から
すべり落ちてゆく鈴の音が足下の瞬きに触れるか否かの刹那
バイオリンの弓で擦られて火花を散らし
開かれてゆく美しい骨格標本があった
庭園を閉じ込めた一冊の本あるいは色彩の薬瓶のような
目を閉じると荒く漉いた和紙の向こうにテントウムシが見えた
今朝漂着したのだ
無花
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