ラゴスの動向(四)/朧月夜
 
「それよりも気にかかるのは、ヒスフェル聖国の動向です」
ケンパは言葉を継いで言った。「かの国は、以前からクールラントとは
 密接な関係を保っていました。しかし、ここへ来て、
 アースランテとも懇意にしようという動きが見てとれるのです」

「ヒスフェル聖国だと? それはあり得ない!」
シュランク・エルベは声高に反対の意見を述べた。
「かの国は魔導に頼っている国ではないか。今さら、軍事路線に
 舵を切ったとでも言うのか?」そこには、ケンパに対する不信の念もあった。 

「これは確かな情報です。もっとも、アーゼン・クラウトほどの、
 情報の正確さはありませんが。しかし、我が国の密偵も優秀ですぞ?
 あなたが軍務に現を抜かしている間に、世の中は移ろっているのです」

「戦争はするな、ということか。あの強大な魔力を目にすれば、
 考え方も変わろうというもの。しかし、先のライランテ戦争で活躍したのは、
 クールラントの魔導士、エインスベルではなかったか?」
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