書かなかった手紙の受け取りかた、届けかた/秋葉竹
 




  

早朝の
すこし肌寒い街で
みあげると、

風が、
空高くに吹くから

書かなかった手紙が
やさしい透明色の紙で
空高く、
揺蕩っているように
感じるんだ、

そこから地表へと、
送られてくる風には
だからかすかな柑橘系の
香りがしているのかもしれない、

そんなものほんとうは、
ただの幻臭なのかも
しれないけど、

私はあなたのことを
想っているときは
きっと
甘くて酸っぱい香りを吸っているから

この
すこし残酷でうすら汚れた街でも
ちょっと、うんざりしながらでも
前とか
あしたとか
光とか
希望とか
[次のページ]
戻る   Point(0)