壊れてからがとても長い/ホロウ・シカエルボク
カタコンベの中でしりあいを探す夢を見てた夕方のうたた寝、目覚めの為に入れたインスタントコーヒーはどこか素気なくて、俺は、さらに首を伸ばすのかそれとも殻の中に戻るのかと悩んでいるカタツムリのような気分で、ソファーの上で空気のノイズに耳を澄ましていた、夕刻は一日の死だという気がする、それはきっと夕陽が、柔らかな炎のようにあたりを染めるせいだろう、手元にあったアドレス帳を開いてみる、そこには誰のアドレスも書かれてはいない、先週の散歩の途中で気まぐれに買ったものだ、でもきっと、誰かにアドレスを尋ねるつもりなんてまるでなかったんだろう、近頃は書きとる必要すらないし…時々そんな風に、理由も用途もないままに
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