幸福のありか/大町綾音
 
言いたかったのかもしれない。
天国などどこにもないと、
生きてきて思った。

それはこころのなかにだけあるものと、
教えられたような気がする。
だから、振り向かないで。

えんえんと続く道は、
救いへの道しるべ。
それは幸福ではない──と、たしかに。

月の満ち欠けに思いをたくして、
わたしのこころは欠け、
また満ちる。

思い出のなかに、幸福はあったか?
その問いすら無意味なほどに、
わたしは生きてきてしまった。

月の満ち欠けに思いを尋ねて、
わたしのこころは問い、
そして答える。

人と出会い、あるいは別れ、
その瞬間(ときどき)に、
夢の園はたしかにあったのだと……

いつかはそこで、すべての人々が出会えるのだと。
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