ともがら/万願寺
 


寝ても醒めてもおめでたい。ゆうゆうとして大股であなたは歩いてゆく。のっしのっし、などというかあいい物ではない、ザッザッ、または、ズサ、ズサ、と、軍隊だか、女戦士だか、裾翻し、大股と感じさせない優美さをもって、と言いたいところだがその実あなたから発されるのは威厳やもしかするとあるひとびとにとっては脅威でもある。
ところであなたは往く。大股で、長い脚で、じょうぶな体で、風を切って、ゆく。
わたしにはあながゆく方向しかわからない。背中しか見えない。そのように定められている。
あなたがどこにゆくにしても、私のことを振り返ることはもうない。私を見てくれることはもうない。それでも私はあなたの背中
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