祭祀クーラスとフランキス(三)/朧月夜
「先ほど、アースランテからの早馬が到着しました。
イリアス・ナディの身柄は、クールラントへと向かっているとのことです」
フランキスは、祭祀クーラスの激昂に触れないように、細心の注意をもって言った。
「ならば良い。アイソニアの騎士も、今はアースランテの人間だ。
次の戦いで、アースランテに勝たせるわけにはいかない。
奴は、クールラントの国内にあっても厄介者だったが、
敵国の武将となった以上、手段を選んではいられないのだ」
「さようでございます。クーラス様。今はすべての手段をもってして、当たるべきです」
そのフランキスの言葉は偽りではなかったが、心中では、
いつ祭祀クーラスを裏切るか、ということばかりを考えていた。
祭祀クーラスが死んでも、その後に混沌が訪れるのであれば、意味がない。
(エインスベルは、果たして今後のクールラントのことを考えているのだろうか?)
何重もの迷いが、フランキスの心のうちを埋め尽くしていた。
(まあ良い。俺自身がここで死んでしまっては、元も子もないのだからな)
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