エインスベルの逡巡(七)/朧月夜
「貴女は、わたしが世界を滅ぼすと言うのか?」と、エインスベル。
「そうです」クシュリーは、きっぱりと言い切った。
「しかし、わたしは貴女を救った。わたしが世界を滅ぼすのであれば、
貴女の命を救ったりはしなかっただろう」
「わたしの命など、いかほどの物でもありません。
貴女がこれからなそうとすること、していること、
それが、世界を破滅へと導くのです。まずは、クールラントから」
クシュリーの言葉は、ある種の重みを持っていた。
そして、それは預言のようにも思われた。エインスベルは、
そのような運命論に対して反発を抱く。己の意志なくして、何の運命かと。
しかし、エインスベルはクシュリーに反駁する言葉を持っていなかった。
エインスベルは、今クールラントの国に政変を起こそうとしていた。
それが、蝶の羽ばたきのように、世界に嵐をもたらさないとも限らない。
そのことは重々承知しているエインスベルだったが、そこには迷いもあった。
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