エインスベルの逡巡(四)/朧月夜
「クシュリーを呼ぼう」唐突に、戦士エイソスが言った。
「彼女は、未来を見通す力を持っている。そして、言葉によって、
現世を変える力を持っている。俺も彼女の力の半分ほども分からないが、
彼女は、魔道以外の力によって、この世界を変え得るのだ」
エインスベルは、眉根を寄せた。彼女が、
戦士エイソスにとって無二の存在であることは心得ていた。
そして、戦士エイソスの心持ちを変えた存在であることも。
しかし、彼女が自分の味方だとは、エインスベルには思えなかった。
クシュリー・クリスティナは巫女である。魔導士とは違う。
そして、その目指すところも、魔導士とは違っていた。
巫女たちは、戦いのために魔術を使うことはしない。彼らは、祈りのみに頼る。
祈りというものが、魔術とどう違うのか、エインスベルにとっては疑問だった。
敵を屠らない。戦いと良しとしない。相違点はいくつもあった。
しかし、祈りによって平和は訪れるのか、それはかりそめの物ではないかと思うのだった。
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