栗鼠の惑星より/本田憲嵩
 
子供の見る世界は
活発な栗鼠のように目まぐるしくて
全てが産まれたての星星のように瑞瑞しい
けれど
その月日の流れる公転の速度は
その身体のなかにある地軸の回転は
じつは樹木の成長のようにとても遅い


樹木のように皺の多い初老の男の
公園で孫を抱きかかえている樹木の男の
そのまだ健康的な身体の動作は
おそらく亀のように鈍くなってゆくだろうが
その身体のなかにある地軸の回転も
その月日の流れる公転の速度も
朝の目覚めの時間とともに
これからもどんどん早くなってゆくだろう


栗鼠は樹木をめぐり栗鼠もまたいずれ樹木になるだろう
けれども巡っているのは樹木をめぐる栗鼠だけじゃなく
樹木もまた動きまわる栗鼠をめぐっているのだ
かつての栗鼠だった頃の自分を思い出して活発に生きようとしているのだ
もはや樹木が栗鼠に戻ることは
二度とないにしても――


活発な孫にその葉を活き活きと輝かせながら
樹木の人の瞳が
まるで瑞瑞しい栗鼠みたいだ


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