越し欠けると/
秋也
バウンドするボールはグニャグニャ
接地面で膨らみ
潰れて溶ける
地に這う 液体と極小の蟻
溺れかけながら群れる
僕には観えた
僕には聴こえず
老人たちの笑い声はひそひそと世を蝕み
残響するから耳を塞ぐ
ベンチで片目を瞑る
水玉の南瓜を模した芸術品の記憶を消滅させる
憶えた郷愁を忘れることはきっと不可能なんだけれども
夕日なんていくら紅く深く暗くなろうと
もはや何でもない
寂しいことはただただ辛いから
ベンチは鉄製でまだ熱を帯びていた
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