冬の禁断症状/ただのみきや
 
てへと流れ往け
堆積すらできない終わりのない深みから
まぼろしの蓮か魔性の顔か
腐乱をもゆるさない時を時としない
つかむものすらないあの虚無で
震えよ 記号 
白い胸乳にすべりおちた羽虫のように





諦念会

食べたことのない珍しいものを見ると
つい食べてみたくもなるが
どうしても食べたくなるのは懐かしい味だ
味覚もずいぶん変わってきて
記憶の中の感情がそれを補正するのだが
このごろは諦めもついて
記憶の味は記憶の中だけで充分になり
食べたことのないものも
想像だけでだいたいわかった気分になれる
こころが老いたのか
いまは酒が役立ってくれる
近いうちそれすらいらなくなるだろう



                  《2022年12月10日》








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