ガージェス・ノルディア(四)/朧月夜
 
「それは出来ません。彼女は大事な人質、いいえ、交渉の緒(いとぐち)です。
 あなたから、最善の道を引き出すためのね」ガージェスの口は滑らかだった。
「わたしはあなたに一つの提案があります。これは、
 わたしの雇い主の意向とは異なるものですが……」

「お前の雇い主は、祭祀クーラスだな?」アイソニアの騎士が尋ねる。
「そうでございます。いいえ、そうでございました。
 しかし、今のわたしには、新しい考えがあるのです。騎士殿」
アイソニアの騎士は、歯噛みした。これは、余計面倒なことになるのではないか……

「アイソニアの騎士殿。わたしは、あなたにこの世界の王となってほしい。

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