星空学級/ちぇりこ。
全体は
先生のガスで充満される
浮かんでいる星空学級の片隅に
田中さんとよく似た女子が
口から糸を吐いて紡いでいる
小林くんは
田中さんとよく似た女子の
紡いだ糸の束を持って
先生のご指示通りに
星と星の間を繋いでゆく
あまりにも糸の量が多くて
せかせかと何往復もするので
疲れた小林くんは不満を口にするが
その度に先生から
「星を知らない子どもたちの
大切な道しるべです
知らない夜空で迷わないように
示して上げるということは
とても重要なことです」
と説得されてしまう
その夜
糸の束を抱えた小林くんが
星と星の間を
忙しなく往復する姿が
沢山の人に目撃された
次の日渡り廊下で小林くんとすれ違う
小林くんは星空学級のことは覚えてないという
小林くんの髪の毛から
焦げた砂糖菓子のような匂いがして
体は少し透けていて
深い藍色の銀河のようなものが
体の中心でゆっくり回っていた
小林くんは大人になって
星雲関係の仕事に就いた
戻る 編 削 Point(11)