漂着せずに深海へ/ただのみきや
バビロンが
幻の金の鈴を裳裾から溢れるように零しながら
年末の大通りを渡って頭の中へと近づいて来る
どこでどれだけ血が流れてもニュースにならなければ
平気の平左なのに今は血の一滴が惜しくて仕方がない
擦り減った眼差しの消しゴムが最後に消したもの
あれは鏡像ではなかったか万華鏡の中へ閉じ込めた蝶
すべての糸が絶たれた後に青いインクが歩き出す
月曜日を人型の栞にして死んだ友の日記に挟む
静かに埋葬された青い曼殊沙華
目的もなく猫の瞳で揺れて燃える魚のように
胸の奥深く行き来するものが記号であるわけもなく
矛盾を主食としながら原理原則に憧れる
鳩のような死を鞄に隠したまま出かけてゆく
行く当てはあっても目的と言うには賽の河原に似て
地から眼差しで斬り上げる空は眩暈を零すばかり
《2022年12月3日》
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