漂着せずに深海へ/ただのみきや
何分 何秒?
そんなものはみな方便
時ははじめから時計と無関係だ
観察者が蓋をあけるまで
時刻の磔刑を閉じ込めたまま
死生が反転した貝のように
沈黙だけが潮騒
忘却だけがレクイエム
日常の流れの底に沈んだ遺失物は
見つけられることを待ってはいない
青い眩暈
月曜日には耳孔や涙腺から青インクが滲んでくる
わたしは脳を鏡に映して出所を探していた
夜半球に脈打つ夜光虫の帯が見える
干しぶどうの雨が屋根を鳴らす夜に
ひとつの声が真水に溺れながら素数を混ぜ返している
時計ではなく時間の方が相手を見失い
名付けと客観の喪失によって
なにも
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