祖母と単線/ちぇりこ。
 
石化した待合室で蝗が飛ぶのを見た
複眼で分割されたぼくが
次々と風化されてゆく
風の中に散る秋の花があって
単線の枕木は草草に食べられている
薄暮という暗さの中で
祖母の大きな輪郭を覚えている
平熱の夕暮れの中で
あどけない夕陽に浸された
はちみつ色のぼくの髪を撫でながら
目ん玉に入れても痛くないと言う
ぼくは祖母の目ん玉の中で
ホームに停車するディーゼルを
ぐるぐる見ていた
海岸沿いの緩やかに湾曲した単線の
とたん。ととん。の軽微な律動に
ぼく達はしばし海藻になる
岩盤に着床する昆布の揺れる
海底の眠りの中で
少ない乗客達の口からは気泡が漏れ出し
漂いなが
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