綾錦とするための朽葉/あらい
 
と例えば、彼が犬歯を囃したから
竜潜月という梱包のそこにあって、赤色の屋根の犬小屋の側に 咲いていたあの傷とはすれ違った
それだけで。
洗いざらしの赤い糸が縮まってしまったなら、私達の安寧とは薄汚い皮に淫された馥郁たるかおり
透明な伝書鳩がこうして簡単に大地を踏みつけている、土の下にはしんだいのちに無駄に芽吹いた
雑草が目を回す。

思い返せば幼顔はうたっていた。日常を譜面にしても罅は僅かに塞がっていって何事もない、
私のところからなにひとつ変わらない今日を、一枚一枚重ねるだけの。
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