ワイルドサイドを歩こうとする/ちぇりこ。
 
でええから
(面倒くせぇ、て相手のピッチャー
(エグい球投げよるやろ?
(打てるか!あんなん
(なんか昔な、都市対抗で優勝したチームのエースやて
(たかが草野球にマジになんな???
(よっしゃ!ほなやろか

陽は中天に在り、風は無い
乾いた音がミットに吸い込まれる
ぼく達は一つの球に右往左往する
迷路の中の鼠のようだ
エンドラン、フルカンスタート、送りバント
小賢しい作戦など物ともしない
相手の投手は難攻不落の要塞で
ぼく達の前に立ち塞がる
一塁ベースは遥か彼方で
約束のように輝いているのに
だから、ぼく達は
デタラメなフォームで
デタラメなスイングで
見たこともない変化球の前に
屍の山を築いてゆく
生存本能は尽きかけても
歩くことは止められない
目的地は分かっているのに
誰も到達することが出来ない
だから、ぼく達は
ワイルドサイドを歩こうとする

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