世界の行方(一)/朧月夜
ヨランがエインスベルと別れる寸前、
彼は、ひとつの言葉をエインスベルの耳元で囁いていた。
「エインスベル様。エランドル・エゴリスは、あなたを利用しようとしています。
彼は、もしくはこのヨースマルテそのものを変えようとしているのかも知れません」
「ヨースマルテを変える? エランドルとは、すでに彼岸の存在ではないのか?」
「彼は生きています。この魔法石を生み出した時、
彼はその命を賭けているようでした。しかし彼は、千のドラゴンを、
このアースレジェへと送り出そうとしています」
「千のドラゴンか……世界の破滅だな」と、エインスベル。
「いいえ、エインスベル様。彼は、ドラゴンがこの世界を救うと考えているのです。
彼らは、ドラゴンが意識共有体だと言っていました」
「意識共有体? それは何だ」──エインスベルにも分からないことがあるようだった。
「詳しくは、わたしも存じません。しかし、彼らはわたしたち人間も意識共有体だと……」
「その謎は、今は放っておこう。汝とアイソニアの騎士とは、イリアスを救ってほしい」
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