ふくよかな幽玄/あらい
 
三階の窓辺で釘付けにする
ひとつ
こころゆくまで
北側に向けた隔たりが囲っている

近隣都市の感覚より目と鼻の先の憧憬を
通りがかったほとりが覗いただけ
これが散歩がてらにちかく
並びより
家庭的開放感を落としている

いままさに命は洗われている

ネジを緩めたオルゴール
潮騒を喚ぶ唇は薄く開かれ
瞳から溢れた光が彼女と物語っていった

「おはよう」
  トランク上の、
  黒猫は欠伸をして 
  伸びをして
(残響が余白を孕む)
  明日の外側にある誕生日は
  峠
  中ばにあって
――葬場にて。
  あおいろをたくし上げた跡に
  し
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