世界パンパカパーン!/角田寿星
て弟に見せびらかしながらひとりで食べて、
その10えんで弟を家来にしておとんにイヤというほどブン殴られて、
おとんはブン殴りながらなぜか眼に涙をいっぱいためて、
ぼくら生れたときから虫ケラのようなワンナウトでした。
でもなつかしいんです。
今でもときどき、夢にみるんです。
高い山にひとりのぼって、でも寒くもひもじくもなくて、
眼下には死んだように湖が横たわってます。
湖をまぶしく照らして映る、
あまねく照らして映る太陽が、
野球のボールになって、
おおきなおおきな100えん玉になって、
ツクダ煮みたいなぼくらを照らすんです。
未だ見たことないあこがれの100えんだまはキラキラと、
まさにぼくの切にねがってたソレでした。
100えんってすごいですね、って言いたいんだけど、
今どき100えんじゃあ、
缶ジュースひとつ買えませんね。
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