石ころの星々より/本田憲嵩
1
それは、ちょうどぼくと入れ替わりで、定年をむかえて辞めていったおっさんがどこかの河原で拾ってきたものなのか。
トラックのフロアにあったそれは、ドアを開けるたびにあまりにもころりんと元気よく地面へところげ落ちるのものだから、その都度ぼくは地面から拾いあげては、トラックのフロアへと連れ戻してやった。それを拾い上げるとき、いつもその手ざわりがとても滑々としており、それがなんとなく手のひらに心地良かった。その行為があまりにもほぼ毎回毎日ドアを開けるたびに繰り返しになるものだから、ある日とうとうぼくはそれを持ち帰ることにした。
2
それは長い年月にわたって河の流れに身
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