すずめの戸締りリライト/はだいろ
 
ろう。
父親の喪失が語られないのだろう。
そこに、意味があるかというと、意味がない。
だから、父親がいない必然性が、ないのである。
すずめは、震災で、家族を失い、それから、
声を失ったことにする。

人間とは、筆談か、スマホのメモで話す。
動物や、物には話しかけているので、声が出ないわけではない。
人を記憶することを恐れ、
人に記憶されることを恐れ、だから、会話をしないのだ。
そうすれば、
あの椅子となら会話ができても、不自然ではない。
それで、
最後、おばさんに一言、
「ただいま」と言う話にすれば良いと思う。
そうしたら、僕は泣いたと思う。


とんかつの腹ごなしに、
あとはずっと、レコード屋さんを回った。
結局、何も買わなかった。
欲しいものが、ないわけではないのだけれど、
いろいろ、
もう一つ、乗り越えるべきものが、あるのかもしれない




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