空/由比良 倖
、血のつながりも無い。
全ては象牙の作りもの。
終わってしまった国々。
その空虚だけが、悲しいほどに僕だった。
*
小さい頃、僕は小さい僕に別れを告げた。
それが大人になる過程なら。
僕はいなくなったうさぎさんと一緒に死ぬべきだった。
水だけが入ったガラス鉢。
僕ひとりの虚空に響いてくる歌たち。
*
寂しさにいろんな色を塗っていく。
寂しさと虚空が、もうひとつの寂しさと虚空に満たされる、そのときまで。
そのときまで、僕は涙を取っておく。
いつかのため。
虚空を抱いて、
今は、この
寂しさの中で、
古びた本たちの中で、
僕は息をしている
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