森/ひだかたけし
 
葉影は優しく
金色の光彩に
濃い斑の筋を引き
森の入り口に
伸びていた
目に見えないもの、
目に見えるもの、
それぞれ同等に
照らし出す
秋の日差しが
彼女の瞳の奥に
不思議に魅惑的な
光を宿させていた

雨の匂いがした
雨の中を歩いて来た
緑の野原が広がり
その手前路上に
杖をついた片腕の老人が
雨に打たれぽつねんと
ひとり立っていた
その向かい
向き合いながら
緑の野原に
白い裸の少女が
やはり雨に打たれ
立っていた
対峙する、
鋭利な輝きを宿した
一対の瞳

何処までも闇に閉ざされた
一対の眼

時間は意味を
なくして
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