国境を越えた緊急医療外伝/板谷みきょう
 
三歳のコンスタンチン君が
サハリンから北海道に来て
火傷の治療をしたことが
大々的な
ニュースになっていた一九九〇年当時

実は同じ頃に
精神病院に思春期の女性が
サハリンから
治療を受けに来ていた

プライバシーの関係で
報道機関にも知らされず
密やかに治療を受けに
来ていたのだ

特別待遇で解放治療を
受けていたから
末端の看護師には
病名も治療計画も
知らされなかった

理事長から
「この入院については
誰にも漏らしてはならない。」
そう言われたのだ

名前も知らされない
ロシア女性が
院内を闊歩する姿を
見ていたが

気になっ
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